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その瞬間、時間はゆっくりと流れたように感じた。弟、4歳年下の彼は、今までの人生で数えるほどしか僕の世界に触れてこなかった。医学の道、それは僕の選んだ世界であり、彼には遠く感じられたであろう。だがその日、遠くとも近くもなくなった。
「この角度で、針を刺すんだよ」と、僕は言った。彼の手は微妙に震えていたが、その目は未来を覗いているようだった。
静かな室内、ステンレスの医療器具とその照明の反射。そのすべてが彼の瞳に映っていた。緊張と期待が交錯する中、彼は針を動かした。
「やった、できたよ」と、彼の声が部屋に響いた。
その言葉とともに、僕たちの間に何か新しい絆が生まれた。兄として、何かを教え、何かを共有する。それ以上に、弟として、何かを学び、何かを掴む。そのバランスが、僕たちをただの兄弟以上の存在に変えた。
この出来事は、弟にとっても僕にとっても、単なる技術の習得以上の何かを意味していた。それは、お互いの可能性を確認し合った証だ。そしてその瞬間、僕はかつてないほどの幸福感に包まれた。
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